『陥穽(かんせい)4』みぃの身体は私の腕の中ですっかり力を失って、しなだれかかっている。手を放してしまえば、その場に崩れてしまうのではないかと心配になるほどだ。
彼女の唇をさらに荒々しくむさぼりながら、その後の成り行きを頭の片隅で計算する余裕さえ私には生まれていた。
もちろん、手錠を外してやったりはしない。
キスをするためだけに、手の込んだやり方で、手錠を施す人間などいないだろう。
美智子の身体に、私たちの今後の関係を決定するであろう「ある種の刻印」を残す。そのための手錠である。
唇を離して、美智子の前へと回りこむ。
そして、さっきまで彼女が座っていた椅子に腰を下ろした。
彼女は放心して、虚ろな瞳を宙に這わせている。
まるで夢見心地な少女のように、うっとりとした表情を見せて、甘い吐息を部屋の熱気の中にすーっと漂わせる。
上気した真っ赤な頬が、彼女の面立ちをさらに幼く見せていた。
そんな童顔を見あげながら、私は彼女の腰に手をかけて、そばに引き寄せた。よろけるように、彼女が数歩前に進む。
私の眼前に立ち尽くしているのは、私が久しく恋焦がれてきた女性だった。彼女は人妻で、私にも家庭がある。
私たちは予め禁じられた関係と知りながらも、互いに惹かれあい、秘めやかな恋を育んできた。
だからこそ、今こうして、現実に彼女が同じ部屋にいる光景が不思議だった。彼女はまるでお人形さんのようだ。
そう、私の玩具となるべく現れた可愛いお人形さんである。
どこから手を付けたら良いものか迷ってしまうほどに、その肉体は魅力にあふれている。
着衣を盛り上げるふくよかな胸の感触を試そうか。
それとも、長い丈のスカートの中にひそんだ脚の付け根に、いきなり手を挿しこんでやろうか。
そんな想いをめぐらせている時間ほど、官能的なものはないだろう。おそらくは美智子にとっても、たまらない時間の隙間だったのではないか。
「これからぼくが、あなたのどこ触れるのか当ててみてください」
高ぶる気持ちをなだめながら、美智子の表情を見つめる。
その言葉の意味が理解できなかったのか、茫然として耳に届いていないのか、あるいは口づけの余韻に浸っているだけなのか、彼女は黙って立ち尽くしている。
「では二択にしましょう。今からあなたの身体を触ります」
子供にでも聞かせるように、わざとゆっくりと喋った。
「胸でしょうか、それともスカートの中でしょうか?」
今度は伝わったようだった。
彼女は即座に、首を横に振る。「わからない」なのか「触らないで」なのか、判断できなかった。しかし、彼女の答を期待して発した質問ではない。私自身の愉しみを先延ばしにしてでも、美智子を辱めたかっただけだ。
「では、答えです」
私は、視線を外さないようにしながら、両手でスカートの裾を持ち上げた。
彼女はビクンと腰を引いた。だが、両手は後ろでからめとられている。私の手を押し止めるすべもなく、ただ羞恥で紅く染まった顔をそむけるしかない。
脚の付け根のすぐ下までスカートをたくし上げてから、私は視線をゆっくりと下ろしていく。
覆い隠されていた美智子の素脚は、すらりと伸びて長い。長いだけに細く見えるのだが、太腿はたっぷりとした量感を示して、肉感的な充実をみなぎらせている。
しかも、肌のきめが細やかで、しっとりと潤い、体毛はほとんど見当たらない。もちろん、後に判明する秘められたある部分をのぞいてではあったが・・・
「ほう。これはこれは・・・きれいな脚ですね」
私は太腿に軽く手をあてがった。
「はっ!」
その手が触れるか触れなないかという瞬間に、美智子はまたしても驚いたように身体をのけ反らせてビクンと反応する。あまりにも感じやすい肉体なのだ。
「これは、たまらないな・・・」
しっとりと汗ばみ、指に吸いついてくる肌の感触を愉しみながら、サワサワと太腿の外側に手を這わせた。
それと同時に、顔を上げて、美智子の表情をうかがう。
彼女は、しっかりとまぶたを閉じ合わせ、唇を固く結んで、私のイタズラに耐えている。
その切ないまでに耐え忍ぶ表情が、私の欲望をさらにかき立ててしまうとは、彼女は知るよしもなかったことだろう。
(つづく)
※体験を基に描いていますが、一部フィクションが含まれています。
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どこで終わりにするかは
始めるよりムズカシイかもしれない。
これは。人生と同じ。
仕事も男と女も。すべて。
ケジメを付けて清く終わることは
至難の業と想います。
政治家も。研究者も。
最近は目立って変なケジメを付ける。
そうそう。私もどこで終わらせましょうか?
では。。