『陥穽(かんせい)1』「まだ贈り物があるんです。また目を閉じてもらえますか」
私は、みぃが全てに従うだろうことを確信して言った。
「君に似合うだろうと思ってね。もう一つ、アクセサリーを用意したんですよ」
彼女の火照った表情には、媚びをはらんだ従順な笑みが張り付いている。
本当に可愛らしいと思った。
そんな彼女を見ていると、私の嗜虐心はどす黒い鉛玉と化して膨らみ続ける。ブリーフの中で硬化したペニスのように。
「さあ」
私が鏡越しに促すと、彼女が再び瞳を閉じた。
一度、目をつぶって良いことがあったなら、二度目は疑うことなく簡単に目を閉じる。それが人間の習性だ。
しかし、どこかに陥穽(落とし穴)が掘られていないとも限らない。疑ってかかるべきなのだ。
再度、瞳を閉じた瞬間、すでに美智子は罠にかかった美しい蝶であった。巧妙に張りめぐらされたクモの糸に羽をからめ取られ、逃げ出すことはできなくなっている。
ところが、彼女はそんなことには全く気が付いていない。
鏡の中で微笑む、初心な人妻だ。
私は旅行カバンから、音をたてないよう注意深く、用意してきた贈り物を取り出した。
「まだ、目はつぶったままでいてくださいね。今度は手を後ろに差し出して」
私に背を向けたまま、彼女の両手が後方に差し出される。
思ったとおり、言いなりである。
急にひんやりと冷たい感触を手首に感じたのか、美智子は肩をすぼめて手を引こうとする。
「じっとしていて。まだ目を開けてはダメですからね」
念を押すように、耳元でささやきかける。
カチャリ・・・
金属の乾いた音がかすかに響き、美智子がビクンと身体を弾ませる。
カチャリッ!
再び金属音が鼓膜を震わせた瞬間に、彼女はハッとして瞳を開けていた。
自らの身に何が起きているのか、とっさに理解できなかったのだろう。彼女は鏡に写った自分の姿を見つめて、ただただ呆然としている。
「この贈り物も、きっと気に入ってくださるはずです」
私はこみあげてくる興奮に声を震わせながら、独りごとでも言うように静かに語りかけた。
その時、彼女の両手は金属の手錠でつながれ、身体の自由を失っていたのだった。
(つづく)
※体験を基に描いていますが、一部フィクションが含まれています。
- 関連記事
-
新たな展開へですね。
私も私事で。いろいろとありまして
仕事も一段落はしたのですが。。
その内にご報告致しますので。
では。