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妄想と欲望のはざまで08

『密会3』

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カフェで落ち合った後の予定は何も決めていなかった。
その場で別れの言葉を告げ、それぞれが今まで通りの生活に戻っていくことも可能だ。
けれど、私にはそんなつもりは微塵も無くなっていた。

そう、みぃを見た瞬間から・・・


私はさりげなく、テーブルの上の彼女の手に自分の手を重ねる。むっちりとして吸い付くような餅肌だった。美智子のふくよかな胸が、呼吸に合わせて大きく波打つ。

「ほら、ぼくの手も震えているでしょう」
私は自分の緊張を隠そうとはしなかった。私の手の内に捉えられた小さな手もプルプルと震えている。

「ずっと、こうしたいと夢見ていました」
ギュッと力をこめて手を握りしめ、みぃの表情を覗きこむ。

すると、彼女は慌てたように視線を落としてしまう。
そのはにかむ表情の可愛らしさに私は見惚れ、気づかれないように胸内で熱くなった息を吐き出す。

あなたが無骨だと仰しゃっていたお手は、とても男性的な繊細さを醸し出し、私にとって、とても魅力的に映っておりました。
そのお手が私の手に触れた瞬間、私のすべての意識が一瞬途切れました。その直後、これ以上高ぶることはないだろうと思えるほど、私の感情は揺さぶられ、戸惑い・・・恥ずかしさを覚えました。

あなたはお気づきないかも知れませんが、それはとても唐突で、それでいて自然だったのです。
あなたの震える手がとても印象的で、その震えを感じたとたん、私の全身がわななくのを感じました。
一瞬の共鳴・・・
あなたの震えが私に連鎖を産み出したのでしょうか。

この手指で・・・
と、ほんの何秒かの間にいろいろな妄想を巡らせていたことを、あなたはご存じないかも知れませんね。そんな感情を悟られたくなくて、あなたの熱を帯びた手指から何度も逃げ出そうとしました。けれど、その度に握り返されることを望んでもいたのです。

恥じらう私をあなたは冷徹に愉しんでいるようでした。けれど、あなたの熱いほどの感情は、握る手指からあふれ出ていたように感じております。それゆえ、私は狼狽し・・・全身の痺れるような快感を堪えていたのです。

(みぃのメール抜粋)


一方、私の胸に湧きあがってきたのは、出逢いの感動でも、彼女に初めて触れた喜びでもなかった。
私は柔らかな手の感触を楽しみながら、彼女の身体を想像し、淫欲で胸を熱くしていたのだ。

黒い装いの内側で息づく熟れた媚肉・・・
豊かな胸の頂点で咲き誇る桃色の薔薇・・・
滲みだした魅蜜で匂いたつ女の濡れ扉・・・

たまらない時間だった。

この日の私は、彼女に合わせて黒づくめの装いだった。
黒いボクサーブリーフの中で、私の分身は痛いくらいに怒張している。下腹部で精子がグルグルと音を立て、精管にこみあげてくるのがわかるほどだ。

「貴女への贈り物があったのだけど、うっかりホテルに忘れてきてしまいました」
私は欲望がたぎった瞳を伏せて、そう切り出した。

「もし良かったら、これからホテルへ取りに行こうと思うのだけど・・・」
それは、彼女をホテルへと誘う口実に他ならなかった。
そう、使い古された手口。あからさまな誘惑である。

当然、彼女もそのことに気がついており、暗黙の了解が交わされているものだと思っていた。
ところが、後日、彼女から話を聞くと、本当に贈り物を忘れ、単にホテルへ取りに行くのだと思ったらしい。

二人は穴蔵のようなカフェから這い出して、地上に立った。

初夏と呼ぶにはまだ早すぎるが、空気は湿った熱気をはらみ、夏の匂いが都市の喧騒の中から立ちのぼってくる。

それは、強い陽光がまぶしい午後のことだった。

(つづく)

※体験を基に描いていますが、一部フィクションが含まれています。
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暗黙の了解。。
智さま。みぃさま

勘違いから物事の始まることがある。
私も10代の出会いも最初は
相手の勘違いと想っていましたが。。

今では。その相手が正しかった事が
今更のように分かっている。。
神様の悪戯としか想えない現実でも

後から考えると粋な天から贈り物の
ように想えてならない。
ただ。幸運はいつもとは限らないのが

人生ですね。何が勝ちで負けなのか?
未だに。迷路で方向を失っている
帆船のようです。風任せと云う事ですかね。

では。
[ 2014/03/23 09:48 ] [ 編集 ]
粋な贈り物
ken様

ken様の素質を見抜かれたお相手に
先見の明があったということですよね。
けれど、出逢いそのものが天啓と申しましょうか、
天の配材(本来の使い方ではないですが)とでも言うのか。

ホテルに贈り物を忘れたという明らかな嘘に対して
「私はどこかで待っていればいいのかな・・・」
と彼女は考えていたそうw
ただ、その天然ぶりは、決して悪い印象ではなく、
むしろホイホイとホテルについて来られたら
ちょっと残念だったかもしれないですし。

人生を航海に喩える先人は多いですが、
自ら漕ぎ出しても、思った方向に進めない、
といった意味で、実に的確な比喩でもあります。
私は、風に流されてしまわぬよう、
風呂敷のような小さな帆を掲げ、
荒波をやりすごすだけで精一杯な毎日です。

コメントありがとうございました^^
[ 2014/03/23 15:30 ] [ 編集 ]
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