『密会4』ときめいていた。
今日初めて逢った人妻と、ホテルに向って歩いている。
いや、初めてとはいえ、長らく恋焦がれてきた女である。
私は隣を歩く彼女を、さりげなく盗み見る。
光を浴びた彼女の姿が新鮮で、思わず私は目を細めずにはいられない。
何より際立っているのは、まばゆいばかりに輝く肌の美しさだった。あまりにも白いため、強い陽射しでジリジリと焼け焦げてしまうのではないか、そう心配してしまうほどだ。
私が滞在するビジネス・ホテルは、部屋の大半がベッドに占められてしまうような安宿だった。
「貴女が来るのだったら、もっといいホテルに泊まっておくべきでした」
そんな言い訳をしながら、美智子を部屋に誘い入れる。
すると、たちまち二人の体温と熱い吐息で、空気がよどんでいく。その日はなぜか空調が効かず、狭い部屋はうだるように暑い。
一人掛けの椅子に彼女を座らせてから、冷えたジャスミン・ティーをすすめ、私はベッドに腰を下ろした。
「やっと逢えましたね」
カフェで口にした言葉を繰り返す。
ついに逢えた、二人きりになれたという実感を、何度でも確かめたかったからだ。
美智子は何も言わず、はにかみ微笑むばかり。ホテルで二人きりになり、緊張が蘇ってきてしまったのだろう。うつむいたまま顔を上げようとしない。
それでも、すぐそばに彼女がいて、同じ部屋の空気を吸っている。そう思うだけで、私は幸福感をおぼえていた。
と同時に、逃げた小鳥を籠の中に捕えたような安堵感が、なぜか胸に広がっていく。
彼女が萎縮しているのをいいことに、私は無遠慮で粘りつくような視線を投げかけ、お茶を飲む姿を観察する。
ルージュに彩られた赤い唇が濡れ、白い喉が上下に動く様が、ひどくなまめかしい。
いくばくか続いた密室での沈黙が、二人の間に重苦しい緊張感をもたらしていた。
互いの体温と吐息、欲望が混ざり合い、部屋は鍋底のように暑い。額に浮かんだ汗が、玉になってこめかみを伝い流れていく。
(どうしたものか・・・)
私は話しかけるタイミングを計りかねて思案していた。
顔を突き出せば、彼女の髪の薫りをかげるかもしれない。
手を伸ばせば、まろみを帯びた乳房に触れることもできるだろう。
そんな不埒なことを考えている時だった。
「あの・・・お手洗いをお借りしたいのですけど」
沈黙を破ったのは美智子だった。もじもじと恥ずかしそうに口にする。
「あ、どうぞ」
そっけないくらい恬淡に、バスルームの扉を指さす。ニンマリとしたい気持ちを表情に出さないように。その様子から、即座に小用だなと思ったのだ。
彼女がバスルームに消える。
聞き耳を立てるなど、ケチなことはしない。
今頃、スカートを捲りあげ、ショーツを下ろしただろうか。彼女の秘所から、生温かな「ゆばり」が、チロチロとほとばしっている最中かもしれない。
そんな想像を楽しむだけで十分すぎた。
水洗が流れる音が部屋に響いた。もうすぐ美智子が出てくる。今は鏡に向かって、メイクをチェックしているところだろう。
(慌てることなど何もない・・・彼女は抱かれるためにホテルについてきたのだから)
そう考えると、心にゆとりが生まれた。
逢瀬の前に彼女からもらったメールを、頭の中で反芻してみる。
私は今、あなたのことを考えながら、熱く潤うほそい蜜道に指を絡ませ痴態を演じています。
胸の蕾を開くように指をあてがい、あなたの熱く反り返った肉幹に手をかけ、樹液をすすっているのです。
蘭にも似た花弁を掻き分け、押さえることのできない衝動を感じながら、今、この時を過ごしています。
どうか、哀れだと思わないで下さい。
あなたにだけ開く花を育んでいるのだと、そう想って頂きたいのです。
何度でも、わたしはあなたを想い、この花を濡らすことでしょう。そして、あなたの樹液をすすり尽くすまで、貪欲にあなたを求め続けるのです。
そして・・また、甘く切ない時間が私を支配し始めました。 あなたと官能的な時間を過ごしたいと・・・
(みぃのメール抜粋) 私の肉幹は透明な樹液を滴らせながら、獲物が再び姿を現すのを、今か今かと待ちわびていた。
(つづく)
※体験を基に描いていますが、一部フィクションが含まれています。
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美しい薔薇の花には棘があると。。
でも。そんな花弁の甘露な蜜を
舌で啜る蜜蜂にも毒針をその肉棒に
隠し持ちながら。花蜜を堪能しながら
味わう。。こっそりと花々は
彼等を子孫を残す実を付ける雄蕊を
知らぬ間に彼等に託し。子宮に身を宿す。
花もそれに群がる雄達も。
それぞれの目的を果たす為に。。
お互いを必要としているこの世界です。
男と女も。。摂理に従い。生きている。